連載.modeler’s EYE

第11回 人の感覚をかたちにする職人集団

高精度を生む手技と道具


秋東精工のプラモデルはニッパ、接着剤を使わず手で軽くひねれば「ポロリ」と取れ、「グッ」と押し込んで圧着するタイプが主流で、その精度の高さに驚かされる。機械加工だけで作った金型で成型すると部品同士の嵌め合いがゆるくなる。硬すぎず柔らかすぎずの「ポロリ」と「グッ」を実現するのは職人による神業的な手加工だ。機械加工では温度変化で刃が膨張し、ねらい通りの調整が難しい。職人の手は1/100mm単位で加工でき金型に塗った塗料ムラを確認しながら調整を繰り返し作りあげていく。また既成の道具では微細な加工ができないため専用道具も手づくりする。このような技とノウハウの集積があって初めて高精度な金型が生まれる。

手づくり道具 刃先が異なるヤスリ(左) 径0.2mmのドリル刃(右)

電車通気口の微細な網目・ファン表現も通常なら部品パーツを分けて表現するが、実は1つの成型品で表現している。ひし形の大きさは複雑で繊細、この部品も秋東精工のこだわりと技で成し得る製品。

「ポロリ」・「グッ」の絶妙な感覚は経験と技能を持った職人の手から生み出される。人の感覚の具現化には繊細な五感が必要で機械加工では表せない。我々も機械を超えた真の職人を目指し更に技を磨かなければならないと痛感した。