オープンイノベーションで描かれる耳の未来
髪で音を感じるインターフェース Ontenna
身体感覚の拡張
学生時代にろう者との出会いがきっかけで、音には言葉以上の情報が含まれている事に気づいたという。無音の掃除機はコンセントが抜けても気づけない。字幕だけのTVはどのくらい盛り上がっているのか分からない。ミーンミーンという蝉の鳴き声も音のパターンやトーンは分からない。音そのものをろう者に届けたいとOntennaの開発は始まった。様々なプロトタイプをろう者の協力をへて製作し行き着いたのが髪の毛への装着だった。髪はセンシティブで間接的な器官なので肌に直接付けた際の蒸れ等の問題も無く、手話や家事の際に手の負担にもならない。髪の毛が新たなインターフェースになるのでは?というのが発想の原点だ。

Ontennaによって笛が吹けるようになったろう者、自分の出した音は聞こえなくても振動で感じる事ができるからだ。 ろう者は手話でコミュニケーションをとる為、声を出すことは殆どないがOntennaに向かって声をだすシーンも見られるようになったという。自分の発した声が光で相手に伝わっているのが視覚的に分かるのが大きな要因だ。音を感じる事で音を出す身体機能が拡張され新しいコミュニケーションが生まれようとしている。

ヘアピン型になった後もろう者のフィードバックを元に丸みを帯びた優しい形状に進化してきた。またマイク部分を突出させることでOntennaに向かって声を出す際に狙いやすい形状へと、この小さなデバイスにろう者への想いが詰まったデザインになっている。これからもユーザーと恊働しながらOntennaプロジェクトを発展させていくと本多氏は語った。
斬新なアイディアの裏にはユーザーと共に作り上げていく直向きな開発姿勢とろう者に音を届けたいという純粋な想いが込められていた。
想いとユーザーからの確かな声が我々の未来を切り開いていくと強く確信した。